都会の一軒宿
茶湯(さのゆ)の宿

古今 天下茶屋

「茶湯(さのゆ)」の宿
天下茶屋は古くから良質な清泉が湧き、多くの茶人がその水に魅せられてきました。
天下人であった太閤秀吉がこの地に立ち寄った際、この泉の水で千利休にお茶を点てさせたところたいそう気に入り、「恵みの水」の名を与えた事から、この地は天下茶屋と呼ばれるようになりました。
「茶湯(さのゆ)」は日本のもてなしの文化です。
この宿は「茶湯(さのゆ)」をコンセプトに、随所にちりばめられた美しいもてなしが、ゲストをお迎えします。

所在地 大阪市天下茶屋
期間 設計期間 2021.01-2021.09
施工期間 2021.10-2022.03
用途 簡易宿所
構造規模 鉄骨造(改修)

もてなしの「茶湯の間」

茶室は亭主と客が直に心を通わせることができる狭小空間も特徴の一つ。
柱と長押で区切られた「茶湯」を体験できる茶室と小さな露地がゲストを迎え、露地越しの窓からは迫力のあるお寺の瓦屋根も借景として楽しめます。
中央の大きな天然木のテーブルを囲んで食事やお喋りを楽しんだり、光障子や和家具、水屋の茶碗ギャラリーなどで現代風にアレンジした”和”の空間がゲストをもてなします。

露地の湯

露地とは茶室へ至る庭のことで、気持ちを整える場として、茶湯では大切にされているお庭です。
陶器の湯にゆったりつかると、灯籠と竹が織りなす枯山水の露地が目の前に広がります。体が十分に温まったら足元に飛び石を配したヒノキの腰掛で涼を取り、ひと休めしたあと、また湯に浸かる。
茶湯のおもてなしの空間に囲まれた湯処です。

「茶湯」を感じる寝室

茶室空間を楽しむ寝室。
光の変化を楽しめるように茶室に出入り口以外の開口部を最初に設けたのが千利休と言われており、以降の茶室では様々な障子を組み合わせて光を取り入れるようになりました。
デザインやサイズが異なる6枚もの障子が生みだす印象的な光の空間と、太閤秀吉が好んだ黄金色の輝く月をイメージした枕元のしつらえを楽しめる寝室です。

繊細な障子と深みのある青緑色の壁紙、伝統技法で銀色に発色させた銅板の一輪挿しを組み合わせた枕元は、茶室には欠かせないもてなしのスペース「床(とこ)」をモチーフにしています。
全体的にシックな色調でまとめられた空間の中で、ほんのりと照らされた一輪挿しがふわりと浮かび上がり、幻想的な空間を演出します。

枕元で仄かに光る欄間の障子と柔らかく照らされた網代編み調の壁が、部屋を明るく彩り、ゲストを優しくもてなします。

ゲストを迎える入口

宿に着くと先ず「茶湯」を象徴する手水鉢と茶碗がゲストを迎え、一歩中に入るとガラス越しに露地の湯の庭につながる枯山水が広がります。
アプローチの中で、自然と「茶湯」へと誘われます。

photo:Akiyoshi Fukuzawa

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